数学の本 | 我らFifthRovers

数学の本

今日の一冊:田島一郎 『数学ワンポイント双書 20イプシロン-デルタ』 共立出版 1978年出版 1,300円+税











中学・高校と数学が得意で、将来は数学者もいいなぁと大学に進学したばかりの新入生の夢を破壊する悪名高きε-δ論法(イプシロン-デルタ論法)を解説した本です。

ε-δ論法とは、高校での微分・積分で、「限りなくゼロに近づける」といったあいまいな(というか文学的・主観的な)表現をもっと厳密にするために使われる手法です。慣れないとかなり何を言っているかさっぱり分かりません。僕の数学の先生の最初の宿題は、「限りなく透明に近いブルーは何色か?」でした。また、私の父は「大学のときε-δ論法を習ったけど、さっぱり意味が分からなかった。しかも、ぜんぜん使わない。あんなもの分からなくても微分・積分が計算できればいいんだよ。」と言ってます。

大学入学後の最初の数学の授業でε-δが出てきて、大半の生徒は高校までの数学との違いにかなりの違和感を感じ、2,3週間後には今までやってきた数学は計算ドリルに過ぎなかった事に気づき、ゴールデンウィークを過ぎるころにはクラスの7,8割は数学が大嫌いになっているという・・・

実用レベルでε-δを使うことほとんどないので、最近はこれを教えない大学・学部も多いらしいですが、一流の理系研究者になるにはぜひとも理解しておきたいところです(数学者・理論物理学者には必須)。

共立出版のワンポイントシリーズは、大学生が行き詰りがちな数学の急所をなるべくやさしく解説した本で、現在37分冊が出ています。本によって当たり外れがあるのはもちろんですが、このε-δはあたりだと思います。

目次:

1. ε-δの意味
ε-δはなぜ必要か
ε-δと数列の極限値
ε-δと関数の極限値
数列・関数の極限値の交流
練習問題1
2. ε-δの働き
実数の連続性
いろいろな数列
コーシーの収束条件
連続関数
練習問題 2

128ページの短い本で、悪名高きε-δを何とか分かりやすく解説しようというコンセプトなので記述も平易です。がんばれば、一日で読むことも十分可能です。

ε-δに苦しんでいる一年生にお勧めです。